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04. Geminiが「考える」仕組みと長いコンテキスト

Geminiに難しい質問を投げると、答えが返るまでに数十秒かかることがあります。画面には考えていますという表示が出て、しばらくしてから整った回答が届く。この時間に何が起きているのか。

もうひとつ、Geminiの目立つ特徴が100万トークンという長いコンテキストウィンドウです。数字が大きすぎてピンと来ないので、実感できる形に置き換えていきます。

この章の全体像として、考えるとは、思考レベル、コンテキスト、長い資料のコツの4つを番号順に並べ、速度と精度のつまみを使い分けられるようになることを示した図

シリーズ目次前章: 03. Geminiの仕組み次章: 05. Geminiを使い始める:画面・プラン・準備

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この章のねらい

考えるとは何をしているのか

前章で見たとおり、モデルは次のトークンを1つずつ生成していきます。考えるのも、動作としては同じです。

違うのは、生成したものを最終回答としてすぐ出さず、いったん中間的な検討として使うところ。人間が下書き用紙で筆算をしてから答えを清書するのに似ています。

【質問】りんごを3個ずつ7人に配り、残りが5個。最初は何個?

【思考(内部)】3個 × 7人 = 21個。残り5個を足すと26個。
                検算: 26 - 5 = 21、21 ÷ 7 = 3。合っている。

【回答】26個です。

この中間の検討に使われるトークンを思考トークン(thinking tokens) と呼びます。目に見えないところで生成され、そして課金対象になります。短い答えなのに料金が高い、と感じるときは、たいてい裏で長く考えています。

精度が上がる理由

モデルは一度に1トークンずつしか出せません。だから難しい問題をいきなり最終形で出そうとすると無理が出ます。途中の計算を書き出す余地を与えると、各ステップが次のステップの手がかりになって、多段階の推論が通りやすくなります。

その代わり、応答は遅く、コストは高くなります。ここにトレードオフがあります。

考えずに答える場合と考えてから答える場合を、並べて比べます。

左に考えずにいきなり最終形を出す流れ、右に思考トークンで下書きしてから答える流れを並べ、精度と引き換えに遅く高価になるトレードオフを示した図

思考レベルという調整つまみ

Geminiでは、どれだけ考えるかを段階で指定できます。開発者向けAPIでは thinking_level というパラメータで、minimal / low / medium / high の4段階です。

質問に対して思考レベルをminimalからhighまで選び、速さと品質のバランスを変えて回答する流れの図

レベル挙動向く用途
minimalほぼ考えずに即答分類、抽出、定型の変換
low軽く確認する程度短い要約、簡単な質問
medium標準。多くのモデルの既定値日常の大半の用途
high時間をかけて検討する難しい推論、複雑なコード、設計判断

既定値はモデルによって異なります。2026年8月時点では、gemini-3.6-flash は medium、gemini-3.5-flash-lite は minimal が既定です。旧世代の gemini-2.5-flash-lite は思考が既定で無効になっています。

Geminiのモデルは既定で動的な思考を行います。レベルを固定しなくても、質問の難しさに応じて考える量を自動で調整する。だいたい既定のままで足ります。

思考の要約と、思考の署名

思考の中身そのものは普通見えませんが、思考の要約(thought summaries) を有効にすると、どんな筋道で考えたのかの概要を受け取れます。Geminiアプリで思考プロセスを表示のような形で見えるのが、これにあたります。

もうひとつ、開発者向けには思考の署名(thought signature) という仕組みがあります。これはモデル内部の推論状態を暗号化して表したもので、会話が複数回にまたがるときに考えの続きを保つために使われます。サーバー側で会話状態を管理する方式なら自動的に扱われるため、通常は意識する必要がありません。

Note

思考の要約は、考えた内容そのものではなく要約です。要約が正しく見えても、実際の推論が正しかったとは限りません。検算や出典確認の代わりにはなりません。

アプリ側での考える

Geminiアプリでは、モデル選択欄で Thinking に相当する選択肢を選ぶと、より深く考えるモデルが使われます。さらに上位のプランには、Deep Think という特に時間をかけて考えるモードもあります。Deep Thinkは数学オリンピックの問題に取り組めるレベルを狙ったもので、日常の質問には過剰です。

使い分けの目安は単純です。

コンテキストウィンドウ:一度に見渡せる範囲

モデルが一度の処理で参照できるトークン数には上限があります。これをコンテキストウィンドウ(context window)と呼びます。Gemini 3系の主要モデルは100万トークンの入力に対応しています。

100万トークンがどれくらいかというと、公式ドキュメントは次のような目安を挙げています。

例え分量
ソースコード約50,000行(1行80文字換算)
小説英語の平均的な長さで約8冊
ポッドキャスト平均的な長さで200エピソード分の書き起こし
個人のメッセージ過去5年分の送信履歴

数字だけでは実感が湧かないので、身近な分量に置き換えて並べます。

100万トークンという入力量を、ソースコード約5万行・英語の小説約8冊・ポッドキャスト200エピソード分・過去5年分のメッセージという4つの分量に置き換えて示した図

日本語はトークン効率が英語より悪いので、実際に入る分量はこれより少なくなります。それでも、本を何冊も一度に読ませられる規模です。

何がウィンドウを消費するのか

見落とすのはここです。枠を使うのは、自分が書いた質問文だけではありません

コンテキストウィンドウを入力側と出力側に分け、それぞれ何が枠を消費するかを示した図

会話が長くなると、古い部分は枠から押し出されるか、要約に置き換えられます。長い会話で最初の指示を忘れたように見えるのは、これです。

対策は単純です。

長い資料を扱うときのコツ

大量の資料を読ませるとき、結果に差が出る要素がいくつかあります。

質問は最後に置く

公式ドキュメントは、材料を先に置いて、質問を最後に書くことを勧めています。

(良い順序)
[資料本文 5万字]

上記の契約書から、解約条件に関する条項だけを抜き出して表にしてください。

資料の前に質問を置くと、モデルが長い本文を読み進める間に問いが遠ざかります。

2つの順序を並べると、違いがはっきりします。

左に質問を先に書く順序、右に資料本文を先に置いて質問を最後に書く順序を並べ、質問を最後に置くほうが問いが直前にあって迷わないことを対比した図

探す精度と、突き合わせる精度

100万トークンの中から特定の1か所を探し出す課題では、最大99%程度の正答率が報告されているそうです。ただし、複数の箇所を同時に照合する課題では精度が落ちます

したがって、次のような使い方が現実的です。

用途適性
長い資料から特定の記述を探す得意
資料全体の要約得意
複数の資料をまたいだ矛盾点の網羅的な洗い出し苦手。分割して繰り返すほうが確実
数値の集計・突き合わせ苦手。表計算に任せるほうが確実

入力の長さと費用

入力が長くなると、最初の文字が返ってくるまでの時間が伸びます。トークン数に応じて課金されるので、費用も増えます。とりあえず全部貼る、は手軽ですが、毎回同じ資料を貼るならコンテキストキャッシュ(同じ内容を保存して再利用する仕組み。開発者向け機能)を使ってください。

要点

参考資料


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