同じ前提を毎回書くのは面倒です。私は情報システム部門の担当で、社内向けの文章を書いている、専門用語は避けて。これを説明し直すのは、3回目で嫌になります。
Geminiには、この繰り返しをなくす仕組みが3つあります。ただし便利さと引き換えに、渡す情報も増えます。仕組みと、その線引きを扱います。
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この章のねらい
- Gems、メモリ、接続アプリの違いと役割を区別できるようになる
- 自分専用のGemを設計できるようになる
- どこまで自分の情報を渡すかを、自分の基準で決められるようになる
- 一時チャットの使いどころを知る
3つの仕組みの違い
似ているようで、効く範囲がまったく違います。
| 仕組み | 何を覚えるか | 効く範囲 | 自分で書くか |
|---|---|---|---|
| Gems | 自分が書いた指示と添付資料 | そのGemを使うときだけ | 書く |
| メモリ | 過去の会話から学んだこと | 通常のチャット全体 | 自動 |
| 接続アプリ | 許可したGoogleアプリのデータ | 許可した機能の中で | 許可するだけ |
自分で書くか、勝手に覚えるか。ここが最大の違いです。制御しやすいのがGems、放っておくと便利になるのがメモリと接続アプリ。
3つを同じ観点でそろえて並べます。
Gems:自分専用の設定を保存する
Gem(ジェム) は、指示と資料をひとまとめにして名前を付けたものです。呼び出せば、毎回その前提から会話が始まります。無料プランでも作れます。
何を書くか
第6章で扱ったプロンプトの4要素が、そのままGemの中身になります。
【名前】社内文書レビュー
【役割】
情報システム部門の文書を校正する編集者として振る舞ってください。
【必ず守ること】
- 専門用語には初出時に短い説明を添える
- 断定できない箇所は「確認が必要」と印を付ける
- 元の文章の数値と固有名詞は絶対に変更しない
【出力形式】
1. 修正後の全文
2. 変更点の一覧(変更前 → 変更後 → 理由)
【参照資料】
(社内の表記ルールをまとめたファイルを添付)
絶対に変更しない、のような禁止事項を明示してください。放っておくと、数値や固有名詞まで読みやすく書き換えられることがあります。
どんなGemが役に立つか
| Gemの例 | 効果 |
|---|---|
| 定型文書のレビュー役 | 書式のばらつきがなくなる |
| 特定分野の相談相手 | 前提説明が不要になる |
| 翻訳・用語統一 | 訳語のぶれがなくなる |
| 批判役(反対意見を出す係) | 同調しやすい傾向への対策になる |
最後の批判役が効きます。第6章で触れたとおり、モデルには利用者に同調しやすい傾向があります。専用のGemを作っておけば、意識的に反対意見を取りに行けます。
よく使うプロンプトが固まってきたら、Gemにしてください。毎回同じことを書いていると感じた瞬間が、作るタイミングです。
メモリ:過去の会話を覚える
メモリは、過去のやりとりから利用者の情報を学んで、次の会話に反映する仕組みです。以前は過去のチャットと呼ばれていた機能が名前を変えました。
たとえば、私は電車通勤で平日は帰りが遅い、と一度話しておけば、後日の予定の相談でそれが考慮されます。
| 利点 | 注意点 |
|---|---|
| 前提説明が不要になる | 覚えてほしくないことも覚える |
| 提案が自分向けになる | 古い情報が残り続けることがある |
| 会話が短くて済む | なぜその答えが出たのか分かりにくくなる |
メモリの内容は設定画面で確認・削除できますし、機能そのものをオフにもできます。以前の話が変な形で引きずられていると感じたら、まずここを見てください。
なお、メモリはすべての機能で働くわけではありません。Gemsの中や音声のLiveチャットなど、対象外の場面があります。
接続アプリ:Googleサービスと繋ぐ
接続アプリ(Connected Apps) の設定で、GmailやGoogleドライブなどをGeminiから参照できるようにできます。第三者のツールを接続できる場合もあります。
さらに、対象地域ではPersonal Intelligenceという機能により、Gmail・フォト・YouTube・検索などを繋いで、より個人に合わせた回答を得られるようになっています。2026年8月時点では、欧州経済領域(EEA)・スイス・英国・ナイジェリアを除く対象地域へベータ版が順次展開されています。利用には18歳以上の個人用Googleアカウントなどの条件があります。
繋ぐと何ができるようになるかは分かりやすい。ただし判断は慎重にしてください。
| 繋ぐ利点 | 繋ぐことで生じること |
|---|---|
| 「先週のあのメール」で通じる | メールの内容が回答の材料になる |
| 予定を踏まえた提案が出る | カレンダーの内容が参照される |
| 自分の資料を根拠に答える | ドライブの文書が読まれる |
利点と、その裏側で起きることは必ず対になります。
判断の目安を挙げます。
- 必要になるまで繋がない。使う場面が来てから、その機能のために繋ぐ
- 業務アカウントでは組織の方針を先に確認する。管理者が制限している場合もある
- 繋いだ後も定期的に見直す。一度繋ぐと、そのままになりがち
文脈は層になっている
ここまでの仕組みは、それぞれ違う層で効いています。回答は、これが重なった結果です。
原則として、具体的で新しい指示ほど強く効きます。いまの入力で、今回は箇条書きにしないで、と書けば、Gemの出力形式より優先されます。
とはいえ層が増えるほど、なぜこの答えになったのかが追いにくくなります。おかしな出力が続くときは、上の層から順に疑ってください。
- いまの入力に矛盾はないか
- 接続アプリから妙な情報を拾っていないか
- メモリに古い前提が残っていないか
- Gemの指示が強すぎないか
一時チャットという逃げ道
機微な相談をしたいが、履歴やメモリには残したくない。そのための一時チャットです。
一時チャットは履歴に保存されず、メモリにも反映されません。ただし安全性確保のため、ごく短期間の保持は行われます(第14章)。
使い分けの目安です。
| 場面 | 選ぶもの |
|---|---|
| 継続的な業務 | 通常のチャット+Gem |
| 個人的な相談 | 一時チャット |
| 他人の情報が含まれる相談 | そもそも入力しない、または匿名化する |
場面と選ぶものの対応を、注意点まで含めて1枚にします。
最後の行を読み飛ばさないでください。一時チャットは、入力してよいという許可ではありません。他人の個人情報や社外秘の情報は、保存の有無にかかわらず慎重に扱ってください。
要点
- Gemsは自分で書いた指示と資料を保存する仕組みで、制御しやすく再現性が高い
- メモリは過去の会話から自動的に学ぶ仕組みで、便利な反面、古い前提が残ることがある
- 接続アプリはGoogleサービスのデータを参照させる設定で、必要になるまで繋がないのが基本
- 前提は層になっている。おかしな出力が続くときは上の層から順に疑う
- 履歴に残したくない相談には一時チャットを使うが、入力してよい情報の線引きとは別問題
参考資料
- Gemini Apps ヘルプ「Get personalization with memory of your past Gemini chats」 https://support.google.com/gemini/answer/16598469 — メモリの仕組みと対象外の機能(基準日: 2026-08-04)
- Gemini Apps ヘルプ「About personalization with Connected Apps」 https://support.google.com/gemini/answer/16836988 — 接続アプリの範囲と管理
- Gemini公式サイト「Personal Intelligence」 https://gemini.google/overview/personal-intelligence/ — ベータ版の対象地域、年齢・アカウント条件
- Google公式ブログ「Personal Intelligence: Connecting Gemini to Google apps」 https://blog.google/innovation-and-ai/products/gemini-app/personal-intelligence/ — Googleアプリ連携の位置づけ
- Google公式ブログ「Gemini app personalizes responses based on past chats, plus new privacy controls」 https://blog.google/products/gemini/temporary-chats-privacy-controls/ — 一時チャットとプライバシー設定
- Google公式ブログ「Gemini app updates: Deep Research, connected apps, personalization」 https://blog.google/products-and-platforms/products/gemini/new-gemini-app-features-march-2025/ — Gemsの無料提供
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