ChatGPTは思ったほど賢くない。そう感じるとき、たいていは指示の出し方に原因があります。モデルは意図を推測しますが、書かれていない前提までは読めません。期待どおりの答えを引き出す指示文の作り方を見ていきます。
シリーズ目次 / 前章: 03. ChatGPTを使い始める:画面・プラン・準備 / 次章: 05. ChatGPT推論モードとモデルの選び方
Table of contents
Open Table of contents
この章のねらい
- プロンプトを構成要素に分解して組み立てられるようになる
- 実務で効く6つの原則を押さえる
- ありがちな失敗の型と、その直し方を知る
プロンプトとは
プロンプト(prompt)は、モデルに与える入力文のことです。日本語では指示文と呼びます。前章までで見たとおり、モデルは与えられた文章の続きとしてもっともらしい応答を作ります。だからプロンプトは命令であると同時に、応答の方向を決める前提そのものです。
新入社員に仕事を頼む場面を思い浮かべてください。これ、いい感じにまとめといて。これでは期待どおりのものは上がってきません。目的、読み手、分量、形式、締切を伝えて、はじめて意図が伝わります。プロンプトも同じです。ただしモデルは人間の新人と違って、分からなくても質問せずに進めます。ここが厄介です。
同じ曖昧な依頼を受けたときの反応を並べると、この違いがはっきりします。
プロンプトの6つの構成要素
| 要素 | 何を書くか | 例 |
|---|---|---|
| 役割 | どんな立場で答えてほしいか | 「あなたは新人研修の講師です」 |
| 文脈 | 背景、前提、読み手 | 「対象は入社1年目の非エンジニアです」 |
| タスク | してほしいこと(動詞を明確に) | 「以下の資料を要約してください」 |
| 制約 | 分量、禁止事項、含めるべき点 | 「800字以内。専門用語には注釈を付ける」 |
| 出力形式 | 構造の指定 | 「見出し付きの箇条書きで」 |
| 例 | 期待する出力のサンプル | 「例: ◯◯ — 一言説明」 |
6つ全部を毎回書く必要はありません。うまくいかないときに、どの要素が抜けているかを点検するチェックリストとして使ってください。
6つの原則
OpenAIが公開しているプロンプト設計のガイドは、6つの戦略にまとまります。分かりやすく言い換えて紹介します。
1. 明確に指示する
曖昧語を避け、数値と具体語に置き換えます。
- 「短く」→「300字以内で」
- 「分かりやすく」→「高校生に説明する想定で、専門用語は使ったら必ず注釈を付けて」
- 「いい感じに」→「候補を3案、それぞれ長所と短所を1行ずつ添えて」
2. 参考となる文章を与える
モデルの記憶に頼らせるより、根拠になる資料を貼り付けたほうが正確です。「この資料の範囲だけで答え、書かれていないことは『資料に記載なし』と答えてください」と添えるだけで、作り話がかなり減ります。
資料と指示は区切り記号で分けると誤解が減ります。
以下の議事録を要約してください。要約は5項目以内の箇条書きにしてください。
### 議事録
(ここに本文)
###
3. 大きな作業は分割する
事業計画を作って、のような大きい依頼は精度が落ちます。想定顧客の整理、競合の比較表、価格案、全体の統合、と段階に割って、1つずつ確認しながら進めてください。
4. 考える時間を与える
結論だけ答えて、と急がせるより、まず条件を箇条書きで整理してから結論を述べてください、と手順を踏ませるほうが、複雑な問題では精度が上がります。推論モデルを使う手もあります(第5章)。
5. 外部のツールを使わせる
最新情報が要るならWeb検索、正確な計算やデータ集計が要るならコード実行やファイル解析。モデルの内部知識だけで済ませようとしないでください。これがいちばんの近道です。
6. 出力を検証する仕組みを作る
同じプロンプトを何度か試し、期待どおりに動く型を見つけたら定型文として保存します。よく使うものはカスタム指示やカスタムGPTに登録すると再利用できます(第8章、第9章)。
6つを並べると、思うような答えが来ないときにどれが抜けているかを探しやすくなります。
悪い例と良い例
悪い例
このメールを丁寧にして
良い例
あなたは法人営業の担当者です。取引先の課長宛てに、納品が3日遅れることを詫びるメールに書き直してください。
条件:
- 400字以内
- 遅延の理由(部品調達の遅れ)と新しい納品日(8月10日)を必ず含める
- 言い訳がましくならないよう、事実→謝罪→対応策→再発防止の順で書く
- 件名も付ける
### 元の文面
(ここに元のメール)
###
違うのは長さではなく、判断に必要な情報が揃っているかどうかです。悪い例では、丁寧の基準も、含めるべき事実も、モデルが推測するしかありません。
同じ6項目で両者を点検すると、埋まっている欄の数が違うだけだと分かります。
対話で仕上げる
1回で完璧な出力を狙わないでください。たたき台を出させてから直すほうが、たいてい速いです。
修正を頼むときは、全体を否定せず差分で指示すると安定します。
- ✗「なんか違う。もう一回」
- ○「構成はこのままで、2番目の項目だけ具体例を1つ追加してください」
ありがちな失敗と対処
| 失敗 | 原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 一般論しか返ってこない | 文脈と制約がない | 読み手、目的、分量、禁止事項を書く |
| 事実が間違っている | 内部知識に頼らせている | 資料を貼る、検索させる、出典を求める |
| 長すぎる/短すぎる | 分量指定がない | 文字数や項目数を数値で指定する |
| 途中から指示を無視する | 会話が長くコンテキストから外れた | 新規チャットにして前提を貼り直す |
| 自分の間違いに同調される | 追従性(第2章) | 「反対意見と根拠も挙げてください」と依頼する |
| 毎回同じ前置きを書くのが面倒 | 一時的な指示にしている | カスタム指示やプロジェクトに登録する |
そのまま使えるテンプレート
# 役割
あなたは{立場・専門}です。
# 背景
{誰のための、何のための作業か}
# 依頼
{してほしいこと(動詞で)}
# 条件
- 分量: {字数・項目数}
- 形式: {表・箇条書き・文章など}
- 必ず含める: {必須要素}
- 避ける: {禁止事項}
# 資料
###
{参考資料があれば貼る}
###
# 不明点の扱い
資料から判断できない箇所は推測せず「要確認」と明示してください。
最後の不明点の扱いが効きます。前章で見たとおり、モデルは分からないときも空欄を埋めようとします。分からないと言っていいと明示的に許可する。これだけで作り話が減ります。
要点
- プロンプトは役割・文脈・タスク・制約・出力形式・例に分解でき、うまくいかないときの点検表になる
- 曖昧語を数値と具体語に置き換えるだけで結果は大きく変わる
- 内部知識に頼らせず、資料を与える・検索させる・ツールを使わせるほうが正確になる
- 1回で完成させず、たたき台を出してから差分で修正する
- 分からない場合は要確認と書いてよい、と許可すると作り話が減る
参考資料
- OpenAI Platform Docs「Prompt engineering」 https://platform.openai.com/docs/guides/prompt-engineering — 6つの戦略と個別の手法(基準日: 2026-08-03)
- Adam Tauman Kalai ほか「Why Language Models Hallucinate」arXiv:2509.04664 https://arxiv.org/abs/2509.04664 — 不確実性の表明を許すことの効果
- OpenAI Help Center https://help.openai.com/ — カスタム指示・プロジェクトによるプロンプトの再利用
シリーズ目次 / 前章: 03. ChatGPTを使い始める:画面・プラン・準備 / 次章: 05. ChatGPT推論モードとモデルの選び方