Claudeを使い続けていると、必ず同じ不満に行き当たります。毎回同じ前提を説明するのが面倒。せっかく書かせた長い文章が会話の中に埋もれる。前に伝えたことを覚えていてほしい。
この3つに対応するのが、ProjectsとArtifactsとメモリです。
シリーズ目次 / 前章: 06. Claude プロンプトの基本 / 次章: 08. Claudeのファイルとリサーチ
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この章のねらい
- 3つの機能がそれぞれ解決する問題を区別できるようになる
- 文脈がどの層に置かれるのかを理解する
- どこに何を置くかを自分で判断できるようになる
文脈は層になっている
Claudeが応答を作るときに参照する情報は、層になっています。
外側の層ほど寿命が長く、内側の層ほど今回限りです。ここを押さえておくと、この情報はどこに書くべきかの判断が付きます。
| 層 | 寿命 | 置くべき情報の例 |
|---|---|---|
| メモリ | アカウント全体・継続的 | 呼び名、常用する言語、文体の好み |
| Project | その案件が続く間 | 用語集、仕様書、案件固有のルール |
| 会話 | そのスレッドの間 | 今日取り組んでいる具体的な課題 |
| メッセージ | 今回限り | この1回の依頼内容 |
Artifacts:成果物を会話から切り離す
Artifacts(アーティファクト)は、Claudeが作った成果物を会話の流れとは別の枠に表示する機能です。
長いコード、記事の原稿、表、HTMLで作った簡単な画面などが対象になります。チャットの吹き出しの中で延々とスクロールする代わりに、右側などの専用領域に開かれ、そこで読んだり編集したりできます。
効いてくるのは、繰り返し直すときです。
- 「この記事の原稿を書いて」→ Artifactとして原稿が生成される
- 「3段落目をもっと具体的に」→ 同じArtifactが更新される
- 「見出しを付け直して」→ また更新される
会話には修正のやりとりだけが残り、成果物は常に最新版が1つだけある。原稿を毎回まるごと再掲させずに済みます。
繰り返しの様子を図にすると、次のとおりです。
作った成果物は、リンクとして共有することもできます。
長くなりそうな成果物はArtifactになりやすく、短い返答はそのまま会話に書かれます。意図的にArtifactにしたいときは、成果物として出して、Artifactにして、と明示すれば通ります。
Projects:案件ごとに文脈をためる
Projects(プロジェクト)は、関連する会話をひとまとめにする箱です。ただの整理用フォルダと違うのは、次の2つを持てるところです。
| 持てるもの | 役割 |
|---|---|
| プロジェクトの資料 | アップロードしたファイル。その中の全会話から参照される |
| カスタム指示 | そのプロジェクト内で常に効く指示 |
たとえば、製品Aのドキュメント整備というプロジェクトを作って、そこに用語集と既存マニュアルを入れ、カスタム指示に常体で書く、製品名は正式名称を使う、と書いておきます。すると、そのプロジェクト内で新しい会話を始めるたびに、これらが自動で効きます。
毎回の会話でやっていた前提の説明が、プロジェクト単位で一度きりになる。ここに尽きます。
Projectsは、業務での使い方がいちばん分かりやすく出る機能でもあります。
| プロジェクトの例 | 入れておく資料 | カスタム指示の例 |
|---|---|---|
| 顧客向け提案書 | 過去の提案書、料金表 | 「敬体で書く」「価格は税抜で表記」 |
| 社内マニュアル整備 | 用語集、既存マニュアル | 「専門用語は初出時に注釈」 |
| 学習ノート | 教材のPDF | 「必ず具体例を1つ添える」 |
プロジェクトの資料もコンテキストを食います。関係の薄い資料を大量に入れると、かえって必要な情報が埋もれます。その案件で毎回参照するものだけに絞ってください。
メモリ:会話をまたいで引き継ぐ
メモリは、会話が変わっても引き継がれる情報です。Projectsが案件単位なのに対して、メモリはアカウント全体に効きます。
適しているのは、案件によらず変わらない情報です。
- 使っている言語や、回答してほしい言語
- 文体の好み(結論から書く、箇条書きを多用しない、など)
- 職種や関心領域といった、回答の前提になる情報
メモリの内容は確認・編集でき、書き出し(エクスポート)と取り込み(インポート)にも対応しています。
メモリは、覚えていてくれると楽なことを入れる場所です。機密情報の保管場所ではありません。何が記録されているかは定期的に確認してください。データの扱い全般は第15章で。
3つの使い分け
迷ったときの判断基準です。
| 状況 | 使うもの |
|---|---|
| 成果物を何度も直したい | Artifacts |
| 同じ資料を何度も参照させたい | Projects |
| 同じルールを毎回適用したい(案件内) | Projectsのカスタム指示 |
| 同じルールを毎回適用したい(全般) | メモリ |
| 今回だけの条件 | メッセージに直接書く |
よくある失敗が、すべてをメモリに入れようとすることです。案件固有のルールをメモリに入れると、無関係な会話にまで適用されて邪魔になります。その情報が有効な範囲に合わせて置き場所を選んでください。
判断の分かれ道を1枚にすると、次のとおりです。
シークレット会話という選択肢
記録を残したくないやりとりのために、履歴に保存されないシークレット(Incognito)の会話も用意されています。
この場合、メモリやProjectsの前提は使われず、会話も残りません。機微な内容を試しに扱いたいとき、履歴を汚したくない一時的な質問に向きます。
要点
- 前提はメモリ、Project、会話、メッセージの層になっていて、外側ほど寿命が長い
- Artifactsは成果物を会話から切り離す仕組みで、繰り返し修正する作業に向く
- Projectsは資料とカスタム指示を持てる箱で、案件ごとの前提説明を一度きりにできる
- メモリはアカウント全体に効くため、案件固有のルールを入れると邪魔になる
- 記録を残したくないときはシークレット会話を使う(メモリやProjectsの文脈は使われない)
参考資料
- Claude ヘルプセンター「What are artifacts and how do I use them?」 https://support.claude.com/ — Artifactsの動作と共有
- Claude ヘルプセンター「What are projects?」 https://support.claude.com/ — プロジェクトの資料とカスタム指示
- Claude ヘルプセンター「Import and export your memory from Claude」 https://support.claude.com/ — メモリの確認と入出力
- Claude Platform ドキュメント「Context windows」 https://platform.claude.com/docs/en/build-with-claude/context-windows — 資料の追加がコンテキストへ与える影響